2006年07月16日

『自由を奪うパン種

主たる聖書テキスト: ガラテヤの信徒への手紙 5章2〜11節


 本日、使徒書テキストとして与えられたガラテヤの信徒への手紙
ですが、この手紙は、使徒パウロが、ガラテヤ地方の諸教会に宛て
て記した手紙です。が、そのあて先のガラテヤ教会が、どの教会を
指すのか、よくわかりません。特定ができないので、詳しい様子は
わからないのですが、異邦人(ユダヤ人以外)の信徒が集まった教会
であったことは確かです。

 異邦人の人々は、教会に来る前に、どのような生活をしていたで
しょうか。それは、真の神を知らず、神でないものに縛られる、そ
ういう歩みでした。とは言え、皆生きることには真剣でした。自ら
の身を潔め、道を求め、世間でよいと言われるものは進んで信仰し
ました。月を拝め、と言われれば、月を拝み、この祭をせよ、と言
われれば、その祭を行い、これを食べよと言われれば食べ、食べる
なと言われれば食べるのを止め、そのような毎日を送っていました。
(コロサイ2:16以下)しかし、まことの救い、安心はありませんでし
た。正しく生きたいと願いながら、実はすべての教えに縛られ、が
んじがらめの奴隷のような生活を送っていたのです。

 しかし、エジプトの地で、奴隷状態で苦しんでいるイスラエルの
民を見捨てず、愛してくださった神は、異邦人をも見捨てず、愛し
てくださいました。御子イエス・キリストをこの世に遣わし、ユダ
ヤ人だけでなく、全人類の罪を贖って自由にしてくださったのです。
ゆえに、異邦人も、奴隷からの解放、自由と言う体験をしたのです。
それゆえ、ガラテヤの信徒たちは、主イエス・キリストを通して示
された神への感謝の思いにあふれて、熱心に礼拝を守っていたこと
でしょう。しかし、この理想的なガラテヤの教会の信徒たちにも、
試練は待ち受けていたのです。そして、多くはその落とし穴にはま
ってしまったのです。

 申命記の8:11-18を参照していただきたいのですが、出エジプトの
民は、カナンの地に定着したときに、「自分の力と手の働きで、こ
の富を築いた。」と錯覚いたしました。それと同じく、苦難なしに
豊かになったガラテヤの教会の信徒たちは、自由を自分の手で獲得
したように錯覚しだしたのです。そこに、ユダヤ主義者という、わ
ずかではあるが、悪いパン種が入り込んできたのです。そして、わ
ずかのパン種が練り粉全体を膨らませるように、このユダヤ主義者
の悪いパン種は教会全体に蔓延し、彼らは、「神を忘れる」という
試練につまづき、罪を犯して、神の民から脱落してしまったのです。
それでは、このユダヤ主義者は何を勧めたのでしょうか。それは、
クリスチャンになった上で、律法を守れ、特に割礼を受ければ立派
で完全なクリスチャンになれる、と唆していたのです。これは、自
力でよいクリスチャンになったと考えているガラテヤ教会の人々の
心を捉えました。自分の力でさらに救われようとして、進んで割礼
を受け、罪を犯してしまったのです。異邦人信徒にとって割礼は、
単なる装飾、アクセサリーにしか過ぎません。装飾、アクセサリー
に過ぎないものを、救いの為に必須として大切にすると何が起こる
でしょうか。それは、自分の誇りのしるしとなり、神の愛から離れ
ることとなります。「あなたがたは、だれであろうと、キリストと
は縁もゆかりもない者とされ、いただいた恵みも失います。」(4節)
という事態になり、「神を忘れる」罪を犯すこととなるのです。そ
れゆえ、パウロは、まだ割礼を受けていない人には踏みとどまるよ
うに、勧めているのです。

 それでは、このパウロの勧めを受けたガラテヤ教会は何をしたら
いいのでしょうか。それは、言うまでもなく悔い改めです。しかし、
割礼を受けてしまった人、受けようとしている人の悔い改めだけで
はありません。教会の悔い改めが求められています。なぜなら、悪
いパン種は膨らんで教会全体を汚染しているからです。そして、そ
のパン種に汚染されたということは、教会全体にその素地があった
という事を意味しているからです。それゆえ、教会が悔い改めの実
を表すためには、悪いパン種を排除することがまず必要です。そし
て、そればかりではなく、そのようなパン種をはやらせてしまった
素地の改革、すなわち教会の悔い改めが必要なのです。そのために
は、出エジプトの民が「神を第一とする」ことを戒めの第一とした
ように、神を第一とする教会の形成、つまり、礼拝を守り、聖餐に
与り、主の恵みをいつも覚える教会の形成が求められています。

(2006/07/16 三宅宣幸牧師)

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