『主の命の現れ』
主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙二 4章7～18節
一昨年、1月31日に三宅朝吉牧師は、天に召されました。その時、
私は、父、三宅朝吉牧師の歩みを、まさに「土の器」としての歩み
であった、と受け止めました。そのような、まさに「土の器」とし
ての朝吉牧師を主はお用い下さって、教会の歩みを今まで守ってく
ださいました。いま、私たちは、もう一度、神の御心を問うことが
求められています。その時に、私たちは、この教会を支えてきた
「土の器」という言葉そして働きに立ち返る必要があるのではない
でしょうか。本日は、使徒書テキストとしてⅡコリ4:7-18を与えら
れました。聖書のみ言葉に聞いてまいりましょう。
ここで、パウロは自分のことを、また「わたしたち」のことを土
の器と呼んでいます。私たちとは誰のことでしょうか。まず第一に
「人間一般」と考えられるのではないでしょうか。そう考えたとき
に、土の器の第一の意味として、「人は土のチリから造られたもの
だ」という旧約以来の考え方が浮かび上がってくるのです。創世記
1章で、人は「神のかたち」に造られ、全地を支配するという、特別
の使命を与えられました。しかし、人が造られたその材料は土のチ
リなのです。2:7aにあるごとく、どんなに大きな使命を帯びていて
も、どんなに能力があろうと、人は所詮は土のチリに過ぎない、や
がて寿命がくれば、土に戻ってしまうのです。しかし、その土のチ
リに主なる神は命の息を吹き入れられました。私たちが生きている
のは、材料である土の故ではなく、神から与えられた命の故である
ことを私たちは知るのです。
が、第二に、パウロはⅡコリで、この土の器ということばを使徒
であるパウロ自身と、仲間の使徒たちに限って適用もしています。
この場合、「わたしたち」とは、使徒たちのことを指します。パウ
ロと使徒たちは立派な働きをしているのに、なぜ、土の器と呼ばれ
るのでしょうか。その第一は、Ⅱテモテ2:20に用例があるごとく、
金や銀の器に対する土の器です。「大きな家には、金や銀の器だけ
でなく、木や土の器もあります。一方は貴いことに、他方は普通の
ことに用いられます。」ここでは人間全体ではなく、人一人一人に
ついて見ています。一人一人かけがえのない個性を与えられている
とは言え、ある分野でより優れた賜物を与えられた人がいることも
確かです。ところが、パウロをはじめとして、使徒たちは、少なく
とも本人の自覚としては、そういう才能あふれる人ではありません
でした。Ⅱコリ10:10で、パウロは自分のことを「手紙は重々しく力
強いが、実際に会ってみると弱々しい人で話もつまらない」と言っ
ております。これがパウロの自己認識なのです。しかし、神は、Ⅱ
コリ1:27にあるごとく「能力のある者や、知恵ある者に恥をかかせ
るため、世の無力な者を選ばれた」のです。パウロ自身、実際にテ
ント作りで生計を立てている、「普通の仕事」レベルにある人であ
るにもかかわらず、使徒としての貴い仕事に用いられた、そのこと
に心意気を感じ、そして、誇りに思ったのです。彼は、自分の能力
ではなく弱さを、そしてその弱さを用いてくださった神を誇ってい
るのです。(Ⅱコリ11:30)
そのように、弱き者を用いてくださる神に、私たちは感謝の念を
覚えるものですが、神は、この土の器たる使徒、そして私たちにも
希望をも与えてくださるということを学んでまいりましょう。
日本語の翻訳だとわかりにくいのですが、実は、7-10節は、一つ
の文です。これは、どういうことを意味するでしょうか。それは、
土の器である「わたしたち」が神の宝をいただくと、「四方から苦
しめられても行き詰まらず、途方にくれても失望せず、虐げられて
も見捨てられず、打ち倒されても滅びない」つまり内外ともに苦難
に遭っても決してギブアップしない、そういう希望を与えられてい
るということなのです。どこからそんな力が与えられるのでしょう
か。まず第一にここでいただく神の宝は、復活の力だからです。よ
みがえりの恵みは、罪に打ち勝つ力です。ゆえに、私たちに罪の力
のなせる業が襲ってきても、滅びないのです。しかし、なぜそれが
「わたしたち」に及ぶのか。ここに土の器の第三の意味、「キリス
トに生きようとする時に必ず苦難に直面しなければならない」が登
場します。そして苦難の時にはじめて「イエスの命がこの体に現れ
る」とのみ言葉も成就するのです。
(2006/04/23 三宅宣幸牧師)
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